正しい姿勢でダイエットの嘘-痩せないがスタイルは良くなる
姿勢を良くするとウエストは細く、身長は高く、胸は張りがでてと、スタイルは良くなります。
でも、ダイエットはできません。筋力を使うから基礎代謝が上がって体重が減る、なんてまことしやかに書かれているサイトが数え切れないほどありますが、科学的にそんなことはあり得ません。
そもそも、正しい姿勢は無理な体勢を維持するものではありません。筋力を使うのではなく、骨格も利用して効率よく体を支えるので、エネルギーの消費が小さくなることが確かめられています。
姿勢を良くして痩せることはできませんが、美しい姿勢はダイエット以上にスタイルへの効果は抜群ですよ。
姿勢を良くしても脂肪は燃えない
姿勢を良くして痩せるのか?
「姿勢を良くすると姿勢保持筋と呼ばれるインナーマッスルを使うため、基礎代謝が上がる」
そんな記載をよく見かけます。どうも書籍でそんなことを書いた人がいるようですね。その中では"基礎代謝が20%上がる"なんて書かれています。
そんなことありえません。
人間の基礎代謝のうち、筋肉が占める割合は18%(FAO/WHO/UNU合同特別専門委員会報告より)です。
全身の基礎代謝を筋肉で20%も上げようとしたら、筋肉での消費割合を通常の18%から38%にまで高める必要があります。
そう、2倍以上の筋肉量が必要です。
インナーマッスルだけで2倍もの筋肉増量・・・あり得ませんね。
書籍も、ネットも科学的根拠となるデータ、論文が紹介されておらず、信用に値しません。
「姿勢を良くすると呼吸が深くなり、酸素を多く取り込むので体温が上がり基礎代謝が上がる」
という説明もあります。
確かに、正しい姿勢のほうが胸郭が広がり、呼吸は深くなります。でも、時間当たりの酸素の取り込み量はほとんど変わりません(1分間に、早くたくさん呼吸するか、ゆっくり少なく呼吸するか)。増えたとしても若干で、劇的な変化は起こりえません。
人体は、酸素の取り込み量は無意識にコントロールされています。これを意識的に崩して、大きく速い呼吸を連続で行い酸素を無理やりたくさん取り込む(ハイパーベンチレーションという呼吸)と頭がふらふらして、時には意識を失います。酸素の取り込み量は多くても少なくてもダメなんです。
そのため、呼吸が浅くて一回での取り込み量が足りなければ、自然と呼吸回数が増えます。一回の量が足りないので回数でカバーするわけです。
呼吸が浅いのに、回数が深い呼吸と同じということはありません。
呼吸回数が増えることで集中力が失われたり自律神経のバランスが崩れたりするということが起こるので、深い呼吸は大事です。しかし、どちらの呼吸であっても、体内の酸素量に大きな変化があるわけではありません。
「姿勢が良いと筋力・呼吸が改善され体温が上がり、基礎代謝が上がる」
と書かれていることもあります。
確かに体温1度の上昇で基礎代謝は13%高くなります。しかし、人体は常に36度~37度に保たれており、動いたりしない限り体温が大きく変わることはありません。低体温が問題視されていますが、平常体温が1度も変わったら大変です。日常生活に支障がでます。
平熱が35度と言っている人の多くは、計測が間違っています。体温計が昔の水銀式から電気式の予測式に変わったことで、自分の体温を正確に把握していない場合が多くあります。30秒などで表示される体温は予測であって、正確な体温を知りたい場合は、その後10分ほど計測を続けると表示してくれます(説明書に書かれていますよ)。また、朝と夜は体温が低いので計測には不向きです。
体温が低い人であっても日常生活を送っているのなら1度もずれていないので、体温が正常になっても基礎代謝は大して変わりません。
正しい姿勢は楽な姿勢
「20%はいかないにして、正しい姿勢のほうが筋力を使うから代謝は上がるはずだ」、
との意見もあるでしょう。
いえいえ。
そもそも、正しい姿勢でいるとき全身のエネルギー消費が最も少なくなることが知られています。
詳しくは「正しい姿勢は負担少なく楽」のページで解説してありますが、正しい姿勢は上半身、とくに頭部の重さをもっとも軽減できるのでエネルギー消費が少なくなります。
そもそも、正しい姿勢は楽な姿勢です。辛いものではありません。
頭や体の重さを骨で支えて、筋力をなるべく使わないようにするのが正しい位置関係です。
普段の姿勢が悪い人が正しい姿勢にすると、普段と違う筋肉を使うので2週間程度は背中が疲れやすいですが、それでも普段無理をしていた筋肉を使わなくなるのでエネルギー効率は良くなっています。
猫背は、バランスが崩れて頭が前に出るから、それを筋肉で支えるため背中や肩がコリやすいんです。猫背が楽な姿勢というなら、筋肉はリラックスしてこらないはずですよね。
そうなると正しい姿勢は楽なはずなのになぜできないのか、疑問になりますよね。
姿勢のきれいなケニアの女性
これは、歩行など運動の減少、同じ姿勢の時間が長いことなどが要因です
座っているときに正しい姿勢を維持するのは結構難しいです(その理由は「椅子に長時間座ると猫背になりやすい」にて)。そのうえ、下側にある本やゲーム、スマートフォンを見れば頭は前に出てしまいますし、そうなれば猫背のほうが楽に感じます。
歩いていると姿勢が良いほうが楽ですが、歩くことは減り、座る時間が増えた現在では姿勢のバランスは崩れやすいです。
ケニアなど、歩くことの多い場所の人たちの姿勢は美しいですよね。
正しい姿勢であっても長時間同じであることはよくありません。移動や体を使って仕事をすると体はさまざまな姿勢をとります。
すると、全体の筋力が平均的に使われ筋肉のバランスがよくなりますし、頭が前に出るような不自然な姿勢の時間が減ります。こうして体はバランスがとられ、正しい姿勢がとりやすくなります。
しかし、同じ姿勢、特に座った姿勢が長いと、悪い姿勢でいる時間が長くなりがちで、バランスは崩れやすいです。
動かない、座っている時間の長い現代の生活では、楽なはずの正しい姿勢を、意識的に身に着けていかなければならないんですよね
でも、姿勢でスタイルは良くなります
姿勢でダイエットを散々否定しましたが、姿勢を良くするとスタイルが良くなるのは本当です。特にウエストは一気に細くなります。
ストレッチトレーナーの兼子ただし氏がテレビで芸能人の姿勢を良くしたとき、
- いとうあさこ:ウエスト87cm→77cm
- 虻川美穂子(北陽):ウエスト80cm→71cm
と、姿勢を改善しただけでウエストが10cm前後も細くなりました。
その他のモニターの方々でも3.5cm、4.5cm、5.3cmと、10cmには届かないもののかなり細くなるのが確認できています。
姿勢を変えるとスタイルが良くなる
姿勢を良くすると身長が高くなり、その分体は上に引っ張られます。内臓は正しい位置に収まりますし、お腹も内側に引かれます。
そのため、姿勢を良くしたその瞬間からウエストは細くなります。
写真の通り、スタイルの変化はウエストだけではありません。身長が高くなるのは前述しましたが、それ以外にも胸は上向きになり張りが出ますし、お腹がへこみます。
屋内での生活が増えた現在、正しい姿勢を自然に習得するのは難しいです。
でも、これほど変わるんですから、意識して姿勢を改善していかないと損ですよ。