姿勢と集中力の関係-正しい姿勢で集中が持続
集中力、長く続くほうがいいですよね。大人ならそのほうが仕事や作業がはかどりますし、子供ならなおさら。勉強、食事、支度、なんでも途中でやめずにやり遂げてもらいたいものです。
自律神経を整え、副交感神経を優位にすると集中力が持続しやすくなるのですが、それには姿勢の改善が効果的です。
正しい姿勢で呼吸が改善
姿勢を正すと胸(胸郭)が広がる
気分を落ち着けて集中しようとするとき、大きく息を吸い込みます。これって意味があるんですよ。
大きく深い呼吸には気分を落ち着かせる効果があります。また、高まりすぎた交感神経を落ち着かせ、副交感神経の優位を高めるという自律神経のバランス調節の働きもあります。
自律神経には交感神経と副交感神経の2種類があります。副交感神経が優位に働くと落ちき、リラックスした状態を作ります。
交感神経優位は興奮状態を作りますので、落ち着きません。
交感神経優位、副交感神経優位、どちらが体に良いというものではありません。運動するときは交感神経優位が望ましいですし、落ち着きたい時は副交感神経優位であるべきです。
バランスも問題で、運動時であっても興奮しすぎは逆効果。それぞれの神経がバランスよく、適切なタイミングで働いてくれる必要があります。
自律神経は自然と働くものなので、意識的に優位性を変えることはできないのですが、息を吐くときに副交感神経が活発になります。そのためゆっくり息を吐くと副交感神経の優位性を高めることができます。
現代の生活はただでさえ交感神経が優位になりがちで、自律神経のバランスは崩れやすくなっています。
深い呼吸で副交感神経の働きを高めたいわけですが、それに一役買うのが姿勢です。
猫背では肩が胸より前に来て、胸郭が後ろに押しつぶされているので、息を吸い込んだ時に胸が十分に開きません。
反り腰の場合は、胸が後ろに引かれ胸郭が開かないので、猫背同様深い呼吸ができません。
正しい姿勢では肩が後ろに行き胸が開きます。このため猫背の場合より自然と深い呼吸ができるようになります。
姿勢が正しいと深い呼吸ができる、というより姿勢が悪いと自然な呼吸ができず本来の力を出せない、言ったほうが正しいですね。
姿勢が悪いと自律神経が乱れる
悪い姿勢が神経に悪影響
姿勢が悪いと自律神経のバランスが乱れることが知られています。
原因ははっきりしていませんが、上記の通り、姿勢が悪ければ呼吸が浅くなり、交感神経優位になりやすいのでバランスが乱れているとも考えられます。
また、アメリカのカイロプラクターDr. Jan Taplinは、首の部分の神経が圧迫されて正常な働きができないために神経のバランスが乱れ、体に様々な不調がもたらされているとしています。
上記の通り、原因は明確ではないのですが、自律神経のバランスが乱れるのは確か。
自律神経のバランスが乱れるとイライラしたり、落ち着きがなくなったりするなど集中力を阻害する精神的な問題が起きてきます。(バランスの乱れが大きいと体の不調もおきます。)
上記の呼吸と合わせて、姿勢を正して自律神経のバランスを正常な状態に置きましょう。
姿勢が良ければ疲れにくい
頭が前に出るほど首に負担
体が疲れてしまっては集中状態を継続するのは難しいです。
そして姿勢が悪いと首、肩が疲れやすいので、長時間の集中には不利になります。
猫背など、頭が本来の位置より前に来ると、頭が背骨から伸びる軸より前に来るので首・背中の筋肉で頭を支えなければなりません。頭は人体で最も重い器官。大人なら5kg以上もあります。これはボーリングの球とほぼ同じ。
頭が前に出るということは、ボーリングの球を筋肉で長時間支えるのと同じ。首・背中が疲労し、肩もこってきます。
こうして生まれる疲れ・コリが集中力を奪います。
正しい姿勢なら背骨が支えてくれるので頭の重さを筋肉で支える必要がありません。
正しい姿勢が最も負荷が少なく楽。重い荷物も軽く運べる
頭の上に重い荷物を乗せて運ぶ人たちがいますよね?あれがまさに重さを背骨で支える、最も疲れずに重い荷物を運ぶやり方なんです。 運んでいる人たちの姿勢は見事にまっすぐ。背骨の力を存分に利用しているのがよくわかります。
正しい姿勢であれば、頭より重いものが乗っていても首も背中も疲れません。
また、正しい姿勢が最もエネルギー消費が少ないことが科学的にわかっています。(詳しくは「正しい姿勢は負担少なく楽」にて。)
正しい姿勢が疲れないというのは座っているときも同じなのですが、座っていると姿勢を保つのがちょっと難しくなります。
座って机に向かっているときは、立っているときほど頭をまっすぐに保つことはできません。椅子に座ると太ももなどが体より前方に来るので、支える面の中心が姿勢の重心線より前に来るため、どうしても頭部も次第に前方に来てしまいます。
座っているときの姿勢と重心線の関係は「椅子に長時間座ると猫背になりやすい」で詳しく解説しますが、自然に前かがみになるとはいえ、その姿勢では首・肩に大きな負担がかかるため、まっすぐの正しい姿勢が望ましいです。
集中力を高めるというのは難しい概念
集中した状態をキープするには、正しい姿勢が有利なのはこれではっきりしました。
では、集中力を高めるのにも姿勢は関わるのかというと、これはなかなか難しいです。
集中力が高まる!と喧伝するところもありますが、そんなに簡単に言えるものではありません。
なぜなら、集中力の高さを科学的に示すことが難しいからです。
集中力が高いというのは
- 一つの物に取り組んで他のことが目に入らないことでしょうか?
- 課題をこなすスピードが速いことでしょうか?
- 普段以上の力が出せる状態のことでしょうか?
スポーツのトッププレイヤーなどが集中力を高めゾーンといわれる精神状態に入ると、周囲の音も聞こえなくなり普段以上の力が出せるといいます。確かにこれは通常では考えられないほど高い集中力と言えます。
でも、サッカーでは周りが見えていないとプレーできません。プロサッカー選手は集中力が低いかというとそんなことはありません。
集中力のトレーニングとして知られる座禅。ある実験で、素人が座禅に集中して取り組んでいるときに針を一本落とすと、ほとんどの人がその音を聞き取ることはできませんでした。座禅に集中しているため小さすぎる音は耳に入らなかったのです。
座禅のプロ、禅僧で同じ実験をしたところ針一本が落ちる音も聞き逃すことはありませんでした。座禅を継続できる時間はもちろん禅僧のほうが断然長いです。、脳波を比較すると禅僧はアルファ波が多く出ていました。
周囲の音が聞こえないのが集中していると言えるのか、聞こえるほうが集中しているのか。脳波を見ても何をもって集中といえるのか。
集中力は確かに存在するのですが、何をもって高いとするのかは難しいです。
また、対象によって大きな影響を受けます。
おもしろい本を読んでいると時間のたつのも忘れます。ゲーム好きの子供ならご飯を忘れて何時間でもゲームを続けられます。
つまらない本、嫌いな勉強で同じようにできるかといえば、無理です。
このように、気分や取り組む内容で集中力は高まったり低くなったりするので、何により集中力が高まったか断定するのが困難です。
集中力の高い・低いは論じるのが難しいです。
でも、一つのことをわき目も振らず続けるというのは、間違いなく集中を継続している状態です。
この集中の継続ができるかどうかに注目しましょう。
そして、この継続には姿勢の影響が大きいのは前述のとおりです。