姿勢と重心線・基底面の関係-体重バランス

姿勢を考える上で、背筋以外に気を付けたいのが重心線の位置です。

どんなに背筋を正しく伸ばしても、重心線の位置がずれていては体を支えるのに余計な力が必要となるので、次第に背筋が曲がっていきますし、肩こり・腰痛などの原因にもなりえます。

そして、この重心からまっすぐ伸びる重心線が基底面の中心にくるとバランスが安定して、姿勢を保つことができます。
そんな大事な重心線と基底面について、わかりやすく説明します。

直立(立っている)時の理想の重心線と基底面

重心線と基底面について、まず重心線ですが、これにはまず重心を知らないとですね。

重心は物体にかかる重力の合点・・・と難しいですが、バランスの中心点のことで質量中心ともよばれます。その点で物を支えるとバランス良く立つよ、ってことですね。
重心線とはその重心を通る垂直線のことです。つまり、重さの中心からまっすぐ地面に引いた線のことです。

円盤の重心

お盆(円盤)を上から見た時の重心

円盤の重心線

お盆を横から見た時の重心と
お盆の重心線

お盆などの円盤の板で考えるとわかりやすいです。お盆を指一本で支えようとしたとき、指がお盆の端にあったらバランスが悪いですよね。お盆の中心に重さの中心、つまり重心があるからです。重心の真下に指を置けば指一本でお盆はバランスを保ちます。逆に上から糸でつるす場合も、この重心からまっすぐつるせばお盆はバランスを保ちます。

つまり、重心から垂直に伸びる線でバランスが取れるわけですが、この垂直線が重心線です。

正しい姿勢をとった時の人間の重心は、仙骨(骨盤を形成するお尻側の骨)のやや前方にきます。お盆の場合と違い高い位置にありますが、大事なのは重心線なので、ここでは高さは無視します。

次に、基底面とは体重を支えている面です。立っているなら足の裏のことですね。

立位の重心位置

立っているときの重心

お盆にコップを一つ乗せることを考えると、お盆の端に乗せるのではなく、中心に乗せたほうが安定しますよね。基底面の中心に重さがかかれば、面全体に重さが均等にかかるので安定するわけです。

人間の場合も同じで、基底面の中心に重さがかかるときが最も安定するので、重心線が基底面の中心に来た時が最も安定し、バランスも含めて正しい姿勢となります。

後ろ重心

後ろ重心-重心線が
基底面の中心より後ろに

重心線が基底面からずれる、例えば体重を後ろ側にかける踵体重(後ろ重心)にすると、重心線が後ろにずれてバランスが悪くなります。こうなると支えるのに筋肉が疲れてしまうため、自然と背中を丸めて頭を前に出すことで重心を前に移動してバランスを取ろうとします。
自然に猫背になってしまうわけですね。

なので、せっかく背筋を伸ばしても重心の位置が基底面の中心から外れていては姿勢を保つことはできません。

重心線と基底面の中心を揃えるには

重心線が基底面の中心を通るようにするのは、難しいことではありません。

まず、背筋を伸ばして正しい姿勢を作ります。このとき、体重が足の指から踵(かかと)まで、足の裏全体に分散されるようにしてください。よくあるのは足の指にほぼ重さがかかっていない踵体重です。

踵体重は足の指にほとんど重さがかかっていない”浮き指”という状態を作ります。浮き指になるとバランスをとるため、頭が自然と前に出ることが多いです。こうなると前に出た頭の重さを支えるために肩の筋肉が緊張し、肩こりを引き起こします。
頭が前に出ない代わりに腰を大きく反らせることもあり、こうなると腰痛の原因となります。

歩くことが減り、また裸足で過ごすことの少ない現代では足の指が衰えやすく、踵体重になりやすいです。
足の指までしっかり体重がかかるように意識しましょう。

杖を使ったときの基底面

杖の基底面

杖と足で作る基底面

杖を使ったときの基底面は足の裏だけでなく、足の裏と杖で作られるので足だけの時より広くなります。このおかげで足が不自由でも安定するのですが、基底面の中心には気を付ける必要があります。

基底面が杖のところまで前方に広がるということは基底面の中心も前方に移動します。また片手で使うので片側によってしまいます。
前方に中心が来るので腰が曲がりやすくなります。

これを防ぐには、なるべく杖を体の近くにつくようにしましょう。

座った時の基底面

座った時も重心線はほぼ変わりません(重心は腰から胸あたりまで上に移動します)。
ただ基底面は異なります。

正座と椅子の重心線

正座と椅子の重心線と基底面
正座のほうが重心線は基底面の中心に近い

座っている時、座面が基底面となりますので、立っているときより広くなります。また、基底面の中心は前方に来ます。

さらに、座り方によっても基底面は異なります。正座と椅子の比較画像を見てみると、椅子のほうが基底面は広く、中心が前方に来ているのがわかります。

正座のほうが正しい姿勢をつくりやすい・姿勢を保ちやすい要因の一つがこれです。

そんな正座でも基底面の中心は前方に来てしまうので、徐々に前傾していきやすいので、時折休憩を挟んで立ち上がったほうがよいです。

椅子については「椅子に長時間座ると猫背になりやすい」で解説していますので、詳しくはそちらをご覧ください。

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